『ココロコネクト ミチランダム』(庵田定夏)

ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)

シリーズを重ね、その困難を幾つも乗り越えてきたが故に、誰もが忘れがちな、当たり前のこと。
つまりその現象は、どうしようもなく「異常」で「おそろしいもの」である、ということ。
あらためて、ここでそれを軸の一つに据えてくれた、そのことが、変な言い方ですが嬉しかった。
誰も超人ではなく、だから立ち向かうより乗り越えるより前に、向き合うこと。
そこから始まる物語、でした。


とはいえ、そこをテキストに落とすと、よし行くぞ、と思っているところを容赦なく打ち砕いてくれる地獄になるのですが。
それでも、これは絶対にどこかで必要だった展開だと思っています。
だから、もう一度ちゃんと向き合える、という。


展開は本当にもう、キツイの一言。
伝わってしまう、というだけでも厳しいところに、送り手受け手のあの設定は、底意地が悪いにもほどがある。
切り取られた一面とはいえ、真実だからこそ伝えられない想いがある。
自分の中にしかない「ほんとうのこと」は、こんなにも「誰かの思うこと」とは違う。
文字通りに「壊れて」しまいそうな、そんな応酬は見ているだけでつらく、最後はきっとよくなるのだと思っていても、なかなか苦しいところでした。
でもそういうところ、逃げないよねこの人……


そして終盤は、「ほんとうのこと」のもう一つの意味。
だから、伝えたい、ということ。
掛け値なし、混じりっ気なしの想いだから、自分の意志で、口に出して、届けたい。
その結末は、言わずもがなで。


当たり前のように続いていると思っていた路だって、どこに繋がっているかなんて分からない。
ふと逸れてみた脇道の先に、思いもよらない何かが待っている、かもしれない。
無限の選択肢、ミチランダム。
選んだ道の先に、幸せを見つけられますように。