『うちの魔女しりませんか?』(山川進)

うちの魔女しりませんか? (ガガガ文庫)

うちの魔女しりませんか? (ガガガ文庫)

それはともすればありふれた、でもだからこそあたたかい物語。
ここが特別すごい、というタイプではありません。
ボーイミーツガール(……にはちょっぴり幼い気もしますが、それはそれとして)、そしてのち——
だからといって、ドキドキしないかと言われればそんなことはなく。
ひょんなことからやってきたちびっこ魔女・ミラの行動には、はらはらさせられるし、その常識の足りなさ故の空回りっぷりは、(端から見る分には)微笑ましく。
リョータのバカさ加減も、茉莉お嬢様の可愛らしい(とあえて評しておきます)傍若無人っぷりも、お話をころころと前に転がしてくれます。


パパとはなんだったのかとか、悪役さんの今一つのしまらなさっぷりとかはあるにせよ、そういうことではなくて、あたたかいんですよね、やっぱり。
それだけでいい、とは言わないけれど、それが間違っているなんてことはない、はずなのです。


ラストシーン。
あの潔いまでの綺麗な終わり方は、正直ちょっと驚きました。
思い切ったなあ、と。
カーテンコールはない、のかもしれません。
けれど、まだもう少し静かに拍手を続けたい気分です。
無理にとは言いません、でも戻ってきてくれてもいいのよ?、と。