『幕末魔法士 II 大坂鬼譚』(田名部宗司)

「待望の続編!」という帯のコピーが何故か心に痛い。
一年ぶり……のはずなのですが、どういうわけかもっと待った気がします。
最近は続刊ペースの速い新人さんが多いからなのか……ともあれ、続いたので一安心、です。
前回は、そこまで「史実」を組み込んで遊んでいた(この「遊ぶ」は当然いい意味で、です)印象はなかったのですが、一転、今回はなかなか積極的に。
この際合致するか正しいかは本題ではなく、ある程度知られているものを織り込むことによるアピールが肝要。
幕末、新撰組、出さなきゃ損々、という。
実際、この世界における「明治維新」はどういう意味を持つのか、はちょっと興味もあるところです。


本編の方は、ちょっとどろどろ風味で、この人物配置ならこうじゃないと、の展開。
やはり、こうあからさまに「いい人」っぽい人がいると、絶対こいつ黒幕だな的な期待度は高まります。
愛憎、というのはやはりドラマの肝。
それでも、最低最悪のところまではいかず、救うところは救うのはエンタメテイスト。
厚さ相応に、いろいろてんこもりで満足感はありました。
冬馬がもう一つ絡めなかったのはちょっともったいないところでしたが、今回は伊織の話だった、と思うべきなのでしょう。
魔人設定を前面に出すのは、お話として佳境を迎える辺りになるのかな……


史実組。
お爺ちゃんたちや桂先生(そもそも桂さんは出たような出てないような)はおいといて、新撰組のお二人。
折角総司をああしたんだから、もっと見せ場をあげればよかったのに。
ややおまけ感は否めず。
ただ、今後も出せる終わり方だったので、そこら辺は以降に期待。
あと、短編でいいので土方さんとのきゃっきゃうふふはやるべき。やるべき。


ここがすごい!、というタイプの作品では元々ありませんが、手堅く上々。
あとは、次がいつ出るか。
年内に出ればいいなあ……