『ミスティーレッド ふたつの恋、ふたつの未来』(青木祐子)

どこか夢の中にいるような、不可思議な手触りの物語。
「予言者」がいるからなのかどうか、舞台はどこまでも現実なのに、同じくらいに幻想的。
ただ、今回は前回よりも、一段階彼ら彼女らの姿がクリアになった……ような気がします。
追われて逃げることと、確定した未来に向き合うこと。
どこか矛盾めいたそれに、流されるように巻き込まれたのが前回、ある程度明確な意志を以て望んだのが今回、とでも表現すればいいでしょうか。


ただ逃げてきたところに、一つ居場所を見つけて落ち着いたせいか、レッドもリリーベルも、それぞれに未来を見据えはじめ、またこちらは文字通りに巻き込まれたといってもいいアレックスも、自身の先行きを選び始めているように見えます。


やがて訪れることは確定していても、それが何であるかは決定していない未来。
回避するためではなく、望む結末のために向き合う、そんなふうに物語は動き始めました。
この幻想めいた空気が、やがてぬぐいさられていくのか、そして王子様とお姫様、それはどちらがどちらを求めるもの、なのかしらん。