『レンタルマギカ 魔法使いの妹、再び』(三田誠)

今回は短編集。
メインのストーリーがクライマックスへ向かう溜め、とでも表現すればいいのか、物語としては大きく動きません……と言いたいところでしたが。
がしかし。
ここにきて、伊庭司の登場。
鬼札は一枚きりだからこその鬼札なわけで、これをうけてイバイツの立ち位置は変わるのか、また、そもそも司はどういう形で舞台上に姿を現すのか。
次回への引きとしては十二分に過ぎる引きです。


さて、それはまあ次に持ち越しの話題として。
収録はタイトル通りの妹様再来編、アストラルと別れた二人の協会編、隻蓮・オズワルドの過去編の三本。
1本目は、そっか、彼女みたいなタイプと相対せる人員不足だよね、となんとも微笑ましい空気。
アディでも基本振り回されっぱなしだし、穂波まで揃っていたら……どうかな、イバイツがいじられる姿だけは間違いなく浮かぶのですが。
ともあれ、勇花のパーフェクトっぷりを描く話。
凛として、しなやかで、例えるなら気高い猫のような。
……と考えると、彼女なら羽根付き猫さんと面白い会話をしてくれるような気がします。
ポジション的にも同等のような。


2本目は、もうちょいこの二人の協会での在り方がみたかったかなあ、と。
ワンエピソードで語るには、きっとあまりにいろいろなことがありすぎるはずなので。
本筋ではないのも確かですが……
個人的に、こちら再度は影崎さんがどうなるのかが気になります。
エピソードが進むにつれ、どんどんといろんな面が出てくるこの人、消滅はして欲しくないのですが……司さん、なんとかしてくれないかしら。


3本目、こういうの好きよ、という一編。
宿命と、己の意志と。
勝手だよと外野が言うのはたやすいことで、そこに縛られた人々のエピソードは、やはり重く、哀しく。
それでも、なおそれを越えて、前を向き、笑い、足を踏み出す者が居ること、次代へと受け継がれるものがあることも、また事実。
アディ然り、ダフネ然り。
しかし、ダフネ・隻蓮はいろいろと初々しいですね。いやはや。


三編それぞれ、エピソードとしては閉じつつ、いずれも次への布石。
司の登場をうけ、旧アストラルのメンバーがどう動くのか、そしてまた現アストラルのメンバーは。
夏頃、との言葉のあった長編が、待ち遠しいところです。