『橘屋本店閻魔帳 ふたつのキスと恋敵!』(高山ちあき)

シリーズ三冊目にして、若干方向転換したのかしらん、と一瞬思ってしまう程度には、わりと恋愛度の高い今回。
その分、これまで見られたちょっとだけ風変わりな魅力は、少し控えめになってしまっていますが、その辺りは痛し痒し……といったところになりますか。
というわけでまあ、いろいろと弘人がお前どうしたと言わんばかりのアピールっぷり。
それに引っ張られるように、美咲もヒロインらしさを発揮して、ちょっと戸惑うくらいの勢い。
どたばた妖怪物語を期待していると、やや首をひねることになるやも。
とはいえ、百々目鬼や雁木小僧は健在だし、まるっきり別物でもなく、これまで脇に下がっていた色恋を表に出したかったのかな、とはタイトルも含めた印象。
タイトル、といえば、連想されるのはライバルの登場ですが、こちらは何故かあっさり気味。
弘人が既にぞっこんすぎるせいもあるでしょうが、あまりやきもき出来ない……とは贅沢な不満、ですねきっと。
こうなると、先はあの怖い人をどう納得させるのか、になっていきそうですが、一筋縄ではいかないようなので、その辺に絡めて跡取りとしての美咲の成長具合も見てみたいところ。

で。
あれこれ言っておいてなんですが、今回のMVPはあとがきイラスト。
いやもうだってああいうのは素晴らしいとしか。
榊さん素敵。お嬢様より素敵。