『魔王をプロデュース!?』（甲田由）

魔王をプロデュース!? (幻狼ファンタジアノベルス)

タイトルからだいたい分かる通り、いわゆる「悪くない魔王」モノ……なんですが、ちょっとひとひねり。
見た目はごついが性根は優しい（がほぼ無職）のお父さんを、影武者バイト魔王としてもり立てる娘さんが主人公の、ドタバタコメディ。
中盤あたりまでのすっとぼけたノリは非常に楽しいです。
この手の作品だと、往々にして「正義」の側が悪者だったりしますが、そういう構造は持たせずに、コメディに徹する姿勢が功を奏して、攻城戦（とは多分誰も呼ばないけど）なんかはいっそ微笑ましく。
むしろ、この辺やベルの生活力発揮シーンをもっと出してもよかったんじゃ、というほど。
故に、ストーリー的なものを持たせてしまった終盤あたりが、若干前半とのノリの違いに引っかかる部分もあります。
たとえば、シリーズが三冊あってその最後で……等々であれば、あまり気にもならなかったと思うのですが……
ただ、それもラスト前あたりから元のノリに戻って、やはり基本は明るく楽しくスラップスティック、な作品。

続きがあれば、四天王のそれぞれであるとか、巨神学院の不憫な人とか、ワン＝ニャン老師とか、見てみたいものはいろいろと。
さしあたっては、幻狼フェアの小冊子掲載短編を楽しみに。

さらに余談として、後書きにイラストレーターつながりでバイレのことが触れてあって、なんとなくにやにや。