『シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と白の貴公子』(三川みり)

どこまでもまっすぐでひたむきなアンと、今一つ素直ではないシャル。
二人の少々じれったい想いの行方が一つテーマのシリーズ、なのですが……
むしろ、裏テーマとも呼ぶべき「ありふれた悪意」が俄然クローズアップされてきました。
身も蓋もなく言ってしまえば、胸くそ悪くなるそれは、しかし誰もが持つ「嫉妬」という感情の先にあるもの。
分かってしまうが故に、より一層腹が立つ、という。
そして、そこで際立ってくるのがジョナスの立ち位置。
流されるままの「ふつうの人」なんですよね、彼。
前回は、改心出来てなかったよ!、というある種のネタキャラ的な印象だったのですが、今回までくるとそんなもんではなかったことが明らかに。
ああいう「ふつうの人」こそが、どこにでもある「悪意」を増幅させるか、はたまた押しとどめるか、その鍵を握っている——それはどこか現実を彷彿とさせて。
彼が、この先どんな決断を下していくのか。
もう一人の主人公、と呼んでもいいのではないかと思います。

……とはいえ、いささか深読みしているところはあるので、彼は彼のまま、なんだかなあ、というポジションのまま、物語の幕が下りる可能性も十分あるのですが。
なんかここまでくると、いい目を見させてあげたいのが人情です。たぶん。