『ザ・サード 青の記憶』(星野亮)

ザ・サード  青の記憶 (富士見ファンタジア文庫)

ザ・サード 青の記憶 (富士見ファンタジア文庫)

久々の新刊。
ちょっと調べたら約二年ぶり……あれ、もっとブランクあったような気がしましたが、それほどでもなかった?
ともあれ、まずはおかえりなさい。


収録はドラマガ掲載分と書き下ろし。
ドラマガ掲載分は、一番古い「トカゲの神様 ―― The one who is not there」が2002年、「跳び魚 ―― leaping fish」が2005年、「月に吠える ―― I'm not free.」が2006年、と並べると差異が出そうなものですが、そんなこともなく。
初出のドラマガなんて手元にないので確認しようがないのですが、手直しはあるにせよ、「トカゲの神様」が火乃香メインのストーリーではないこと、2005年の時点でメインストーリーは「死すべき神々の荒野」が終了しており、以降火乃香の在り方を大きく変えるエピソードはないこと、その辺りの要因があるのかなあ、と思います。
ということで、わりとすんなりあの世界に戻ることが出来ました。
一面の荒野となんでも屋の少女、クセのある同行人。
短編集のエピソードらしく、ライトノベルチューンのハードボイルド風味、というのも変わらず。
書き下ろしの「青の記憶 ―― Memories of Blue」は、SFテイストといい意味での青臭さの入り混じった、まさしくザ・サードらしい一編。
人間・機械知性体問わず、その生き様・在り方を描くのが、やはりこのシリーズの真髄だと思います。


再始動の短編集としては、ミリィ出てないよとか先生出てないよとかしずく出てるのに蒼い殺戮者さんはとか(個人的に非常に好き)フィラ・マリークは話だけですかとか(個人的に非常に好き)、そういうところをのぞけばいいとこ取りな感じで申し分なし。
火乃香の在り方はもうほぼ固まっていて、パイフウもまた道を見つけ、本編の流れとしてはイクス、クエス、<ザ・サード>を含めた世界の在り方辺りに踏み込んでいくことになるのでしょうが、火乃香であれば、最後まで一人のなんでも屋として世界を渡っていってくれるものと思います。
……帯に再始動って謳ったんだから、続き出るんだよね?