『ユニコーンの恋文』(石和仙衣)

ユニコーンの恋文 (講談社X文庫ホワイトハート)

ユニコーンの恋文 (講談社X文庫ホワイトハート)

この世ならざる、魔法に支配された世界〈夢の平原〉で、花婿を待ち続ける少女・カタリアが主人公。
タイトル通り、彼女のそばにはどこからかこの世界に訪れたユニコーンがいて、普通に考えれば彼との恋愛ものになるわけですが、そこにさらに外の世界から別の男が迷い込んできて、そして……というお話。
案の定、彼はいろいろとめんどくさい男なのではありますが、葛藤や困難を乗り越えて徐々に引かれ合う二人の姿は、文字通りに「ロマンス」。
基本的に悪い人の出てこない、ある種の夢物語ではありますが、これはあえてそういう作りにしているのだろうな、と思います。


この手の「乙女」のお話だと、たいていうじうじしがちですが、カタリアさんわりとアグレッシブ。
〈夢の平原〉で話が進行すると見せかけて、序盤で思い切ってそこを飛び出してしまいます。
思えば帯にもそう書いてあったわけですが、この辺りはちょっと驚きも。
恋する乙女(この段階では未満なわけですが)は待ってるだけではいけないようです。


そして、その飛び出した先である「現実世界」。
こちらはいわゆる僕らのいる世界を指すわけですが、そこで出会う人たちは基本的に善良。
お相手であるところの彼の妹やその友人の女弁護士さんなんかは、ポジション的に確執があってもいいところなのですが、すんなりと仲良く。
この辺りの口あたりのよさに、引っかかる人は引っかかる、かもしれません。
ただ、これはやはりそういう部分ではなく、もっと大きな、どうしようもなくやるせないものと対峙しつつも、しゃにむにがんばった女の子が、最後に手に入れる幸せ、そのための物語だからなんじゃないかなあ、と。
ついでながら、上述の二人のうち、特に後者はなかなか素敵な配役。
とてもとてもよい、友達。


一言で要約するのであれば、やはり「ロマンス」という言葉に尽きます。
どうぞ、一息に最後まで。